前回、「音楽業界にとって本当に必要なのは、新しいサービスではなく、
音楽リスナーの絶対数を増やすことだ」と書くと同時に、それは結局は
無理だ、とも書きました。
つまり、もはや次世代音楽サービスがどんなものになろうと、レコード会社や
ミュージシャンには特に未来があるわけではないということです。
結局儲かるのは、次世代プラットフォームを管理している少数のIT企業だけ、
ってことになるでしょう。
それだって、どの程度儲かるのかは未知数ではありますが。
もちろん、ユーザーにとっては便利なシステムになるのでしょうから、
それは いいのですが、でも別に誰も儲からない。
ネットの技術って全部そういう方向ですよね。
ひたすら金のかからない、効率よく無駄のない仕組みを組み上げていって、
それまでその無駄で食っていた人たちの仕事をどんどん奪っていく。
ある意味ネットは、雇用破壊の技術です。
アマゾンとアップルのおかげで、CD屋と書店が潰れ、雑誌は廃刊し、
CDプレス業者と印刷業者が潰れると。まあ、そういう流れです。
現代は、たった1〜2社に利益が集中して、その結果、数千人とか数万人が
職を失うという社会になりつつあります。その効率のよさは、エコっちゃエコなので、
今の価値観に合ってはいるんですけど、同時に、雇用は崩壊する。
最近になってやっと僕は気づいたのですが、結局、「無駄な仕事」や
「無駄な消費」が経済をまわし、豊かな大衆文化を成り立たせていたのだなと。
ネットの技術は、その「無駄」を排するものなので、その結果、今後は、
経済は縮小し、文化的にはお金のかからない、シンプルでコンパクトな
方向へ流れていくと予想されます。
たとえば、僕が学生だった頃は、YouTubeがないどころか、試聴機さえ
ままならない感じでしたので、CDを買うことは一種の「賭け」でした。
買ってみなければ中身がわからないのです。
情報も少ないですから、音楽雑誌を読み漁り、とりあえずCD屋さんに行くと。
もちろん、Amazonも無いですから、行くしかありません。というか、ほぼ毎日、
新宿のタワーレコードに通っていました。
完全に寝坊して午後にノソノソと床から起き出してきたけれど、大学の授業は
すでに終わってしまっている。そうか、じゃあタワレコ行こうよ、みたいなノリです。
それはそれで、今思えばなかなか楽しい日々だった気もしますが、そうやって
毎月10枚20枚、多い月には40枚とかCDを買っていたわけです。
今なんかだと、CD発売日にアルバム全曲YouTubeにアップされているものが
あったりして、ひっくり返りそうになるわけですけども。
というか、そもそもCDを購入する際の感覚が違う。
現代人は、「本当に好きミュージシャンのCDなら買う」という感覚だと思います。
しかし、当時の僕は、「本当に好きなミュージシャンを発見するためにCDを買う」
なのです。
メチャクチャ効率悪いのですが、当時はそれしかやりようがなかったわけで、
僕だって、今なら全部YouTubeでチェックして終わらせますよ、そんなもん。
いや、本当に散財しました。
しかし、ネットが普及した今、僕は音楽雑誌をまったく読まなくなり、タワレコに
行くこともなくなりました。というか、そもそもCDを買わなくなりました。
つまり、皆さんと同じです。(^^;
それで、まあ、えーと、ここで話を戻しますが、つまり、ネットの技術により、
CD屋とか音楽雑誌を作る仕事は激減したわけですが、「そのかわり」を
ネットは特に何も生み出してはいないということです。
これは結構重要なことだと思います。
たとえば、いくつかの古い仕事を破壊して、新たなビジネスを生む、
というのならいいのですが、ネットの技術はそういうものではない。
破壊だけして、新たな雇用は何も生まないのです。
単に効率をよくする。そういう技術。
少なくとも、音楽産業周りでは完全にそうなっていると思います。
レコーディングも自宅で作業出来るようになりお金がかからなくなった一方で、
商業スタジオの経営は苦しくなるとか。
全般的に、大きなお金が動いていかない方向へ向かっている。
それがネット社会というか、今後の社会の姿なんだと思います。(つづく)
(2011.7.30)
→ 次世代音楽サービスと音楽業界(3)